高脂血症(脂質異常症)

高脂血症(脂質異常症)とは

血中にはコレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)、リン脂質、脂肪酸などの脂質が含まれています。そのうち、コレステロール(総コレステロール)とリン脂質で7割、中性脂肪が2割でほとんどを占めています。
コレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールの2種類があります。LDLコレステロールは細胞にエネルギー源となる脂質を届け、HDLコレステロールは余った脂質を細胞から回収する働きをしています。
そのため、よくLDLを悪玉、HDLを善玉と例えますが、実際はどちらも必要なものであり、両者がバランスを保っていることが大切なのです。
このバランスが乱れてしまった状態、すなわちLDLコレステロールが多過ぎる、またはHDLコレステロールが少な過ぎることを、以前は高脂血症と呼んでいました。なお、HDLコレステロールが減少する原因としては、中性脂肪の増加が指摘されています。
一方でLDLコレステロールが少な過ぎると、エネルギーが不足してこちらも様々な症状を起こします。そのため、2007年からそれらの状態を総称して脂質異常症と言うようになりました。男性は30代から増え始め、女性は閉経の影響などもあり50代から増え始めるという報告があります。
他の多くの生活習慣病と同様、初期にはほとんど自覚症状がありません。しかし放置していると動脈硬化により血管が狭窄し、脳卒中(脳出血、脳梗塞)、狭心症、心筋梗塞、動脈瘤など命に関わる重篤な疾患の危険性が高まりますので注意が必要です。
健康診断の血液検査などで、血中脂質の異常を指摘されたら、すぐに受診してしっかりと原因を確認し、治療を受けることが大切です。

コレステロールの数値が
上がる原因

血中脂質の増加には、食べ過ぎ、脂質の高い食品の摂りすぎや運動不足など、生活習慣の乱れによる肥満が大きく関わっています。
脂質の70~80%は体内で作られていますが、残りの20~30%は食物から摂取しています。
そのため、全体的な過食、脂質の多い食物の摂り過ぎ、またマーガリンやショートニングなど、油脂を加工した食品に含まれる不飽和脂肪酸の一種であるトランス脂肪酸などの摂取が多過ぎることが原因となります。
また女性の場合、閉経によって黄体ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少しますが、黄体ホルモンにはLDLコレステロールの増加を抑制する働きがありますので、これが減少することで高脂血症状態になりやすいとされています。
その他にも、甲状腺ホルモンの分泌低下や副腎の分泌物質が異常を来すことで、脂質異常の原因となることが知られています。

高脂血症(脂質異常症)を
放置
する事で起こるトラブル

脂質異常症も初期にはほとんど自覚症状はありません。そのため、気づかずに放置してしまい気づいたら動脈硬化が進んでいたということがよくあります。
LDLコレステロールが増えたり、HDLコレステロールが減り過ぎたりすると、血管内で脂質が増加し、脂質が血管内壁に水垢のようにへばりつくようになります。
すると血管に脂質の粥のような塊(粥腫=アテローム)ができ始め、ついにはプラークという大きな塊になります。そうなると、その部分の血流が妨げられ、さらに血管壁も弾力性を失って弱くなり、ちょっとしたことで破綻し裂けてしまうようになります。これを修復しようとして血小板が集まると、血流が悪いことも相まって、血栓を作ってしまいます。
この血栓が剥がれて身体のどこかに詰まってしまうことによって重大な症状が起こることになります。 もし脳でそれが起これば脳梗塞、心臓で起これば心筋梗塞となります。
中性脂肪も細胞のエネルギーになったり、皮下脂肪を作り身体を冷えから守ったりと、身体にとって必須のものですが、あまり増え過ぎると、HDLコレステロールが減少して脂質の処理が上手く働かなくなる原因となります。
すると余った脂質を回収することが出来なくなり、血管壁に脂質が溜まりやすくなってしまいます。さらに中性脂肪が高まり1000mg/dLを超えると(脂質異常症の指標は150mg/dL)急性膵炎を起こす可能性も出てきます。

脂質異常症による主な疾患

脂質異常症による高脂血症状態を続けると、脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、大動脈瘤、急性膵炎、閉塞性動脈硬化症などを起こしやすいことが知られています。

高脂血症(脂質異常症)の
検査・診断

脂質異常症は、空腹時に血液検査を行い、その数値によって診断します。 診断基準は2007年から変更され、それまでは総コレステロール値を基準にしていましたが、脂質異常症と疾患の呼び方も変更になり、診断基準はLDLコレステロール値と中性脂肪(トリグリセリド=TG)値を基準にするようになりました。 基準値は以下の表のようになります。

LDLコレステロール 140mg/dl以上 高LDLコレステロール血症と診断
HDLコレステロール 40mg/dl未満 低HDLコレステロール血症と診断
中性脂肪(トリグリセリド=TG) 150mg/dl以上 高TG(トリグリセリド血症)と診断

これらのどれか1つでも当てはまると脂質異常症と診断されます。 血液検査の結果、脂質に異常があると指摘された場合、問診によって既往症、生活習慣などについて詳しくお聞きした後、身長・体重・腹囲などの測定も行います。
また脂質異常を起こす原因疾患が無いかどうか、甲状腺機能の検査なども行うことになります。

高脂血症(脂質異常症)の
治療

血液検査などから、脂質異常が発見されたら、早めに受診し治療を始めることが大切です。動脈硬化で血管が痛み始めてしまうと、治療が大変になっていきます。
治療では、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高TG血症といったどのタイプの脂質異常なのかに合わせて、生活習慣の改善を中心に治療を行います。また原因疾患がある場合はその治療も行います。

生活習慣改善

脂質異常症の原因は、食生活、喫煙、飲酒、運動不足などによる生活習慣の乱れが多いため、食事療法、運動療法を行うと共に、禁煙、減酒などの改善によって適正体重を維持し、エネルギーとしての脂肪の消費も促進します。
これらを行うだけで、軽度の脂質異常症はかなり改善します。それに加えて、高血圧、糖尿病、脂肪肝などの症状も軽減することが可能になってきます。

薬物療法

食事療法、運動療法などで十分な効果が得られない場合、薬物療法を検討します。
LDLコレステロール値が高い場合は肝臓内のコレステロールを減らして肝臓にLDLコレステロールを回収する働きをするスタチン系の薬、中性脂肪が高い高TG(トリグリセリド)血症の場合は、脂質をコントロールする遺伝子を調整するフィブラート系の薬を使用します。
その他にも、小腸でのコレステロール吸収を阻害しLDLコレステロールと中性脂肪を同時に低下させる薬など様々なタイプの脂質調整薬がありますので、患者様の状態に合わせて必要に応じ幾つかの薬を組み合わせて使用します。

TOPへ